主任研究員 三田村が博士(工学)の学位を授与される | ||
当研究所寒地基礎技術研究グループ寒地構造チームの三田村浩主任研究員は、平成19年3月26日付けで、長岡技術科学大学大学院工学研究科博士後期課程(社会人3年課程コース)を、在学期間の1年間短縮を認められて修了し、博士(工学)の学位を授与されました。学位論文の題目は、「高機能性および経済性を有するECC合成鋼床版の開発に関する研究」です。
本研究は、近年の大型車交通量の増加や車両の大型化に伴う、既設鋼床版の疲労損傷を回避するため、高機能性および経済性に優れた高靱性繊維補強セメント複合材料ECC(Engineered Cementitious Composite)を用いた鋼床版上面増厚補強工法の開発と設計・施工法の確立を目的とするものです。そのため、構造細目の立案と材料性能試験を含む各種要素試験及び実物型試験体を用いた疲労載荷試験等を行い、提案した設計・施工法の妥当性を検証したものであり、得られた主な知見等は次のとおりです。
1)従前の鋼床版に対し、ECCを用いた上面増厚補強を行うことにより、発生応力度は著しく低減されることが期待できるものであり、実橋でのダンプトラックの載荷試験によりその効果を確認できた。
なお、この研究で得られた知見については、土木学会で出版されることとなった、「複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料(HPFRCC)設計・施工指針(案)」にも生かされており、今後のこの技術の普及が期待されるところです。2)鋼床版とECCを一体化した完全弾塑性解析モデルを用いた解析値については、実橋での計測値とよく整合し、解析手法の妥当性を確認できた。 3)ECCの安定した製造及び品質管理と施工管理ができ、ECC打設完了時点でのひび割れ発生はほとんど無かった。 4)一方、鋼床版上が完全な水没環境下にあり、かつ荷重作用範囲が密閉状態の場合、鋼床版とECCとの間に大きな水圧が発生することが確認されたことから、その影響を回避させるために研究を継続することが、今後の課題である。 5)また、既供用の鋼床版橋の補強工事に当たっては、早期に合成効果が発揮でき、かつ交通解放が可能な早強ECCの開発が急務である。 三田村主任研究員は、日本国有鉄道に10年間勤務の後、昭和61年に北海道開発局へ出向となり、同年より網走開発建設部勤務、札幌開発建設部勤務を経て、平成10年に開発土木研究所構造部構造研究室に転任となり3年間勤務しました。平成13年に札幌開発建設部へ異動の後、平成16年に(独)北海道開発土木研究所構造部構造研究室主任研究員として転任となり、現在に至っています。 この間、行政の従事期間も含め、橋梁等の合理的・経済的な設計法や補修・補強法などに関する技術研究開発に継続的かつ精力的に尽力し、各種学会への研究発表、研究委員会への参画等、高い研究業務実績を上げてきています。平成13年度には土木学会北海道支部奨励賞を受賞し、平成16年には鋼製リンク支承(北海道のような積雪寒冷地においても安定した性能を発揮できる、幾何学特性を利用した免震支承)の技術開発者の1人として、国土技術開発賞を受賞しました。 このほか、現場への技術の普及や技術相談への対応等も含め、積雪寒冷地における橋梁等構造物の研究開発や技術の普及・指導等に努めているところであり、今後一層の活躍が期待されています。 |
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