研究員 岡田 慎哉が博士(工学)の学位を授与される | ||
当研究所寒地基礎技術研究グループ寒地構造チームの岡田慎哉研究員は、平成21年3月23日付けで、室蘭工業大学大学院工学研究科建設工学専攻の博士後期課程を修了し、博士(工学)の学位を授与されました。学位論文の題目は、「鉄筋コンクリート製アーチ構造の耐衝撃挙動に関する実験的・解析的研究」です。
トンネルの坑口部には鉄筋コンクリート(RC)製のアーチ構造形式の巻出工が設置されている場合が多々見受けられますが、その背面斜面に当初想定され得なかった新たな落石要因が発見された場合、それに対する巻出工の耐衝撃性能の検討が必要となります。 しかし、RC製アーチ構造の耐衝撃性能はあまり明らかになっていない現状にあることから、本研究では、安全性を損なうことなく、既設RC製アーチ構造の有効活用を可能にすることを目的として、その耐衝撃性能を的確に把握するための実験的及び解析的研究を進めるとともに、種々の検討を加え、その成果を学位論文としてとりまとめたものです。得られた主な知見等は次のとおりです。
1)実構造の1/4程度の断面形状の小型RCアーチ模型に対する重錘落下衝撃実験の結果より、梁断面のアーチへの帯鉄筋の配筋により、せん断破壊が抑制され、靱性が向上すること等を確認できた。
2)前述の模型を対象に、これまで筆者らが研究してきた衝撃応答解析手法を用いた数値解析を行った結果、模型を適切にモデル化することにより、前述の実験結果を精度よく再現可能であること等を確認できた。 3)廃道後の実構造のRCアーチを用いた重錘落下衝撃実験の結果より、アーチ上への緩衝工の設置による耐衝撃性能の大幅な向上効果や、偏心載荷を行った場合の構造全体挙動の変化、敷砂緩衝工を用いた場合の落石衝撃力についての既存式の適用性等について確認できた。 4)前述の実験を対象に、衝撃応答解析手法を用いた数値解析を行い、実験結果と比較検討した結果、アーチ構造の挙動を比較的良好に再現できること等を確認できた。 5)RC製アーチに対して提案の数値解析手法を用い、現行の落石防護覆道の設計法(落石衝撃荷重を静的荷重に置換した弾性設計法)を準用することにより、耐衝撃性能の評価を試みた結果、この数値解析手法により耐衝撃性能評価や断面設計が可能であることが明らかになった。 この研究で得られた以上の知見については、実現場の既設RC巻出工の耐落石衝撃性能の照査や合理的な対策工の立案に生かされていくことが期待されるところです。 岡田前研究員は、平成14年4月に国土交通省に採用後、当研究所の構造部構造研究室(現寒地基礎技術研究グループ寒地構造チーム)に研究員として配属となり、現在に至っています。 この間、落石対策工の合理的・経済的な設計法はもとより、積雪寒冷地における橋梁の耐震性能評価手法や道路付属物の耐荷力などに関する研究開発に継続的かつ精力的に取り組み、各種学会への研究発表、研究委員会への参画等、高い研究業務実績を上げてきました。平成17年には土木学会北海道支部奨励賞を受賞しました。このほか、現場への技術の普及や技術相談への対応等にも取り組んできました。 なお,岡田研究員は本年4月に北海道開発局(釧路開発建設部)へ出向となりましたが、当研究所で培ってきた経験を生かした、今後一層の活躍が期待されます。 |
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